
ぴしぴしの庭
数日前の休みの午前、自宅の居間から外を眺めていたところ近くの枝にシジュウカラらしき小鳥が飛来した。「おっ」と思った瞬間小鳥のあしもとに緑色の動くものが見え、それが捉えられた芋虫であることがすぐにわかった。
前夜息子と芋虫アニメ「Larva」を観たばかりだった事もあり、捕らえられた芋虫に対して複雑な心境になったのだけど、それでも自然の食物連鎖とはそういうものであって、これもひとつの摂理なのだ、と諦念がうまれたそのとき、小鳥が小さくも鋭い嘴でその芋虫の体を、ものすごいスピードで繰り返し、ぐさぐさ突き刺しはじめ、虚を突かれた。
それでも、これは自然の摂理、しかたなし、と残酷なその事実から目を逸らして遠くの木々を見たところ、好天降り注ぐ朝の木漏れ日といった遠方の風景はとてもおだやか、によって、直近のその小鳥のとても素早く且つ残酷な行為が、余計に目に付くコントラストとなったのだった。
しばし小鳥の動作を無理矢理看過していたのだけども、視界の際でずっと件の微動を繰り返している様子。「まだ刺してるのか」と目をやると、鳥は今度は突然芋虫を咥えながら、ものすごい迅速なスピードでヘッドバンキングを始め、手前の小枝に「ピシピシピシピシピシピシピシピシ」と数えきれぬほどの速度で芋虫を打ちつけ始めたので、慄然とした。
その後その小鳥が、ぐさぐさぐさぐさ、ぴしぴしぴしぴし、を4~5回ほど繰り返している間、食物連鎖という自然の理に対して、極力寛大な姿勢を保とうとしている自分のきもちが、半分は食に対して容赦のない小鳥への畏怖、半分は芋虫への憐憫によって、容赦なく動揺してしまったのだった。
「もう死んでるから、ぴしぴしはもうやめて欲しい」と心の中で痛切なメッセージを鳥に送ったのだったが、依然行為をやめぬ小鳥に、自分がこの風景から立ち去ればよいのだと気づいて腰をあげようとしたその瞬間、「ぐい」と芋虫を呑み込みやがったために、またも不意うち、「あ」とつぶやいた途端に小鳥は去った。
秋意。