石ノ森 VS パラジャーノフ

4歳になる息子の最大のヒーローは、仮面ライダーか戦隊ものかで日々拮抗している。そして、どちらも原作者は石ノ森章太郎。日曜朝7:30〜8:30は、息子にとっての「ゴールデン石ノ森タイム」である。

ある日、世界を少し広げようと、息子をビデオレンタルショップに連れて行った。宮崎駿作品などを見せてみようと思っていたのだが、一目散に戦隊もののコーナーに入って動かず。結果として、現在の息子にとっては駿よりも石ノ森である。


ところが、思いがけない方角からライバルが現れた。大映画監督の故・セルゲイ・パラジャーノフである。
私と同じくらいの年代のグラフィックデザイナーなら、デザイン年鑑などで「ざくろの色」のスチールが大胆に用いられたComme des Garçonsの広告を見た事があるかもしれない。井上嗣也(勝手に“先生”と呼んでいる)氏の素晴らしいお仕事で、自分もそれにシビれ、DVDを買ったクチだ。

ある日、自宅で「ざくろの色」をBGVとして流していた。息子から「アニメにして」とゴネられるかなと思いきや、彼は不思議そうな顔をしたまま画面を見つめ、ぴたりと動きを止めた。試しにその後も何度か流してみたが、やはり同じように見入っていた。

台詞も少なく、演技は硬質で、音楽には宗教的な響きがある。全体にストイックで、子供にとっては決して親しみやすい映像ではないはずなのだが、その圧倒的な視覚的インパクトのせいなのか、きまぐれな幼児の動きをぴたりと止めた。


一昨日、息子が「戦隊もの×仮面ライダー豪華共演」という内容の、ドラえもんとアンパンマンが同じ町に現れたような豪華DVDを観ていた。

合間に、ふと「ざくろの色」を流してみた。ディスクの入れ替え中はずっと文句を言っていたのに、映像が現れた途端、「コレデイイ」と呟いて、おとなしく観始めた。

パラジャーノフ、恐るべし。今のところ、石ノ森章太郎を忘れさせることができるのは彼だけだ。

Thumbnail photo: Cropped from a photo by Yuri Mechitov, via Wikimedia Commons. Licensed under CC BY-SA 4.0.